こんな症状こんな病気へ戻る

子宮内膜症

貧血のページへ戻る

本来、子宮内膜は、子宮の内側で増殖し、そしてはがれて生理の血液とともに体外に毎月排出されています。
子宮内膜症とは、子宮内膜とそっくりな組織がその子宮の内側以外の場所で増殖し、生理のたびに同じようにはがれることによってその場所で出血を繰り返す病気のことをいいます。言い換えれば、本来出血するべきところでないところで毎月怪我を繰り返しているようなものなのです。
主に骨盤の中の卵巣や卵管、子宮の壁の中、直腸や膀胱の周囲、腹膜などにみられますが、ときには肺や横隔膜、外陰部などにもみられることもあります。
原因は不明です。一説では、タンポンなどで生理の血液が逆流して卵管をとおっておなかの中などにもれて、その中の子宮内膜の組織が定着しておこる、ということもいわれていますが、さだかではありません。ただ、はっきりしているのは、女性ホルモンであるエストロゲンというホルモンによって進行していく、ということです。
ですので、初めて生理が始まってからそれほど時間がたっていない時期にもまれにみとめられることがあります。
子宮内膜の組織が、卵巣のなかにあると、毎月出血を繰り返し、その血液が卵巣の皮の中にたまっていくので、チョコレートのような古い血液がたまった、チョコレートのう腫とよばれる卵巣腫瘍になります。
99%は良性ですが、まれに悪性化がみられることもあります。
一般的に、チョコレートのう腫が悪性化するときはサイズが大きくなっていくことがよくみられます。
ですので、チョコレートのう腫のある方は、サイズや状態によって定期的なチェックを必要とします

また子宮内膜症組織が腹膜などに発生すると、はじめは赤い点々から次第にブルーベリースポットと呼ばれる黒っぽい病変となり、最後には白色の病変となって瘢痕化していきます。
腸などに発生して癒着などがおこったり、また子宮の壁の中に発生すると壁がどんどん分厚くなって、生理の血液が増えたり(このような状態を子宮腺筋症といいます)、生理痛が強くなったりすることもあります
ただし、まったく無症状のまま進行していく子宮内膜症もめずらしくはありません。他の理由で婦人科を受診されたときなどに偶然みつかることもめずらしくはありませんし、また、内診と超音波だけでは診断がつかず、腹腔鏡で確認しないといけないときもあります

基本的に、一度発症すると、完全に治る、ということは生理がある限りはありません。閉経してしまうと、女性ホルモンが減ることにより進行は止まりますが、チョコレートのう腫などはそのままの状態でやはり後日治療が必要になることもあります。

治療法は、症状によってさまざまですが、痛みなどを軽減する対症療法から、女性ホルモンをさげてやって一時的に更年期状態にするようなホルモンのお薬(LH−RHアナログや、あるいは低用量ピル、黄体ホルモン(ジエノゲスト)、漢方薬、腹腔鏡や開腹手術などがあります。

なお、最近子宮内膜症の疼痛に対してのみ保険処方が可能な低用量ピルが認可されました。

子宮内膜症は、このように子宮内膜と同じものが子宮の中以外にできるものです。(右図)

卵巣の中だと、
チョコレートのう腫

卵管や腸、膀胱などの癒着をおこしたり子宮の筋肉の中におこると
子宮の壁が分厚くなります。

正常な状態では、子宮の中だけに
子宮内膜(オレンジの部分)があります
(左図)

子宮内膜症の図