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骨は体の中で、いろいろな組織の重さなどを支えると同時に、体の中にカルシウムとリンを供給する、貯蔵庫の役割を果たしています。そのために、骨は常に骨吸収と骨形成を繰り返し、バランスが保たれているのです。
骨強度の低下を特徴として、骨折のリスクが増大する骨格疾患のことを骨粗しょう症といいます。
いいかえれば、骨がスカスカしてくる状態のことです。そして、骨強度の70%は骨密度によるものといわれています。
こと、女性に多い疾患といわれます。
骨粗しょう症はもちろん、加齢のみでおこるものではありません。内分泌系の病気や、ステロイド投与、栄養不良、先天性、糖尿病やリウマチ、慢性アルコール中毒などによるものもありますが、これらは続発性骨粗しょう症といわれます。
他の原因がなく、加齢とともに進行する状態を、原発性骨粗しょう症といいます。多くの骨粗しょう症がこのタイプです。
女性の骨量のピークは、23歳ごろといわれており、それ以降はしばらくはそれほど大きな減少は見られず、30代くらいまではある程度一定化した量を保っているのですが、40歳をこえるくらいから男女ともに加齢による骨密度の減少がみられるようになります。









こと、閉経をむかえるころから、その後10年くらいで女性の骨密度の減少は強くなってゆきます。
だいたい、45歳〜60歳の間には年間2%ずつ骨量が減少し、60歳以降は年間1%ずつ低下するといわれています。
これは、女性ホルモンのエストロゲンが、骨の吸収と形成のバランスを保つのに大きな役割を果たしているからなのです。エストロゲンが減少することにより、骨粗しょう症になりやすくなるのです。
65歳以上の女性は全員、可能性があるといっても過言ではありません。
80歳代では女性の約半数、男性の約2,3割が骨粗しょう症といわれています。
また、65歳以下の方であっても、身長が以前より2センチ以上縮んでいたり、低体重や早目の閉経などの方は要注意といえます。(身長が縮むということは、場合によっては脊椎の圧迫骨折(痛みなどの症状がない場合が30%あるといわれています)を意味することがあります。特に、年に2センチ上縮む、というのであればかなりの高確率で脊椎の骨折や椎間板の異常があるといわれています。)
また、FOSTA(骨粗しょう症自己評価指数)
これは
FOSTA=(体重(Kg)−年齢(歳))×0.2
であらわされますが、この」値がー4未満である場合
も骨粗しょう症の可能性が高くなります。日本人女性のデータでは、これらのー4未満の女性の約半数が骨粗しょう症でした。
(たとえば、体重50kg、年齢65歳とすると、(50−65)×0.2=−3となり、骨粗しょう症の可能性が高いと考えます。)

骨粗しょう症の診断としてはまず、骨量測定が必要ですが、この測定法は、腰椎や大腿骨頸部、橈骨、第2中指骨などの骨量をX線や超音波で測定する方法が一般的です。
では、具体的にどのような値がでれば骨粗しょう症なのでしょうか?

20歳から44歳の若い女性の骨密度の平均値をYAMといいますが、実際測定した測定値がYAMの70%以下であれば骨粗しょう症、70〜80%くらいであれば骨量減少と診断されます。
最近の研究では、骨量が80%以下で治療をはじめたほうがよいとされてきています。
また、骨代謝マーカーとして、DPD、NTX、BAPなどの測定も必要なときがあります。もちろん、これらの測定がなされていなくても、骨の脆弱による骨折などが明らかに診断された場合も、例外ではありません。
骨粗しょう症を早期に発見しようとすると、40歳以上の方は無症状であっても最低数年に1回は骨量測定が必要ではないかといわれています
当クリニックでは、骨粗しょう症のための簡便な検査方法のひとつである、血液検査を診断の補助としておこなっております。

骨粗しょう症の予防と治療

カルシウム

ビタミンK

ビタミンD

骨粗しょう症

予防としては、まず普段からカルシウム(1日800mg摂取を推奨)などの含まれる食品をこころがけてとることです。また、カルシウムのみを摂取しても、たんぱく質が足らないと、カルシウムは体に吸収されないので、良質のたんぱく質を適量とりましょう。
また、カルシウムが骨になるためにはビタミンD(1日400〜800IU(10〜20μg摂取推奨)が必要なのですが、このビタミンDは日光により作られ、肝臓と腎臓に助けられて作用します。ビタミンK(250〜300μg摂取推奨)も有効で、たくさん含まれている食品の代表は納豆です。納豆をよく食べる地域のひとには、大腿骨骨折の頻度が低いという統計もあります。
また、適度な運動による骨の刺激も、骨粗しょう症を予防するといわれています。治療と予防の大一歩は適度な運動とカルシウム摂取(食事)なのです。
逆にリスクをあげるものとしては、喫煙や過度のアルコール摂取、ステロイド服用、胃切除、などがあります。

ビタミンDを多く含む食品 あんこう、イカ、きくらげ、うなぎのかば焼き、なまり節、しいたけ、にしんの燻製、秋刀魚、ひらめ、カレイなど
ビタミンKを多く含む食品 納豆、モロヘイヤ、海藻類、青野菜 (パセリ、しそ、あしたば、しゅんぎく、バジル、ブロッコリ、ほうれん草、キャベツ、にらなど)他クロレラ、青汁など(ただし、ビタミンKはワルファリンなど、血液の固まるのを防ぐお薬の作用を抑制する効果がありますので、血液凝固抑制剤を使用している方はあまりとりすぎないでください。)
カルシウムを多く含む食品 乳製品、大豆製品、桜海老、しらす干、あゆ、わかさぎ、ししゃも、いわしの丸干し、小松菜、青梗菜など






骨粗しょう症にお勧めの食べ物





また、塩分やカフェインのとりすぎが、尿中へのカルシウムの排泄を増して、体内のカルシウムを減らす可能性もありますが、あくまでとりすぎの場合ですので、普通に摂取される分には問題はありません。


治療薬としては

骨の吸収を抑制する   エストロゲンなど女性ホルモン イブリフラボン ビスホスフォネート SERM(塩酸ラロキシフェン)
カルシトニン製剤(骨粗しょう症のときの痛みなどに)
骨を作ることを助ける PTH ビタミンK2 蛋白同化ホルモン
骨への栄養 カルシウム製剤 活性型ビタミンD3製剤


年齢や、症状、また骨粗しょう症以外のおまけの効果を期待したときなどと、状態によって投薬方法を決めていくこととなります。

更年期障害の症状を緩和する目的もいっしょに治療を、と考えるのであれば、閉経直前直後くらいに方には女性ホルモン製剤の投与もよい方法です。ただし、乳がんや心血管系の病気のリスクはやや上昇します。

SERMは、閉経後の骨粗しょう症の女性に、副作用(乳がんや子宮体癌のリスクを上昇させない、むしろ下げるという報告も)の点からも最近注目されている骨吸収阻害薬のひとつです。また、LDLコレステロールを低下させる作用ももっています。
ただし、まれに、下肢のけいれんや、深部静脈の血栓症などをおこすことがあるといわれていますが、日本人の場合は欧米人より血栓症の発症率は低く、0.1%未満と報告されています。またほてりやのぼせをおこすこともあります。どちらかといえば、閉経されてからそんなに時間がたっていない方にむいているお薬です。

またこれらの中でも、ビスフォスフォネートは、大腿骨頸部骨折を防止する作用が強いとされ、また、以前骨粗しょう症のために骨折などがあったひと(比較的高齢者むき)に効果的といわれていますが、早朝に内服することや、場合によっては嘔気、下痢などの消化器症状がでることがあります。また、最近は週1回の投与で毎日の投与と同じ効果が期待できる薬も処方できるようになってきました。

骨粗しょう症による大腿骨や椎体の骨折は、その人の自由に動ける生活を破壊してしまいます。
骨への健康にも眼をむけて、生活習慣の改善や見直しとともに、定期的な骨の健康のチェックを考えていただければ幸いです。