B型肝炎
hepatitis B virusの感染によるものです。出産するときの感染や免疫低下状態での感染では、かなり高確率でキャリアとなりますが、免疫系がしっかりしている成人であればほとんどは一過性の感染で慢性化は少ないといわれています。(約1%前後という統計もありますが、ほとんどないともいわれています。)
アメリカのデータでは、B型急性肝炎の患者さんの40〜50%は異性間性交渉によるものだというデータがありますが、実際問題として、どのくらいの率が日本でSTDとして感染しているかははっきりとはわかっていません。一般的には、日本人の慢性化するB型肝炎のほとんどは母子感染ではないかといわれています。
性行為による感染の場合は、約2〜6週間でHBs抗原が陽性になるといわれています。同じころ、HBe抗原も陽性となります。針を刺したり、輸血などによる感染の場合は数日から数週間と短くなり、おそらく含まれているウィルスが多いためではないかといわれています。
そして、2,3週間たってからGOT,GPTなどが上昇し、食欲不振、倦怠感、赤褐色尿などの症状がみられるようになります。
約1%前後が劇症肝炎となります。(死亡率60〜70%といわれています)
血液中のこれらの抗原は、発症時期や程度によって消失したりすることもあり、IgM型HBc抗体陽性であれば、HBVによる肝炎であることはまず間違いないと診断がつきます。
ほとんどの場合は自然に軽快しますので、安静・経過観察となります。
GOTやGPTが300以上と上昇したり、黄疸がある場合は入院治療となります。
予防法にはワクチンがあります。ただしすでにHBs抗体を持っていることも多いので、ワクチンを接種する前に検査を必要とするときもあります。
C型肝炎やHIVにくらべて感染力は強く、精液中や唾液中にもウィルスがいることがあります。
肝炎(A型・B型・C型)
A型肝炎
hepatitis A virusの感染によるもので主に経口感染です。ウィルスに汚染された水や食べ物で感染しますが、感染力が非常に強く、STDのひとつとしても考えられています。
潜伏期間は1ヶ月前後、発熱、全身倦怠感、嘔気、嘔吐、黄疸などがみられます。血液検査ではGOT、GPTなどの上昇がみられます。血液中のIgM抗体、IgG抗体などを測定して診断します。
ほとんどが2,3ヶ月で軽快し、慢性化はほとんどありません。
治療薬はなく、治療の基本は安静です。
感染予防策として、ワクチンがあります。1回投与、1ヵ月後に再度投与。長期の免疫を期待するのであれば数カ月後に3回目の追加投与が必要となります。
STDとしては、ウィルスは感染してから数ヶ月は便中に排泄されるため、fecal-oralな感染がみられます。
C型肝炎
hepatitis C virusの感染によるものです。
HCVは血液による感染がもっとも多く、他に性行為や母児の感染があります。(ただし、性交渉による感染率はそれほど高くはありません。また、母子感染の場合も、3歳くらいまでにHCVが排除されることが多く、慢性化することは少ないといわれています)
ただし、成人になって感染すると慢性化つる確立は高いといわれています。
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症状はやはり、発熱、全身倦怠感、食欲不振、黄疸などですがまったく無症状で経過することもよくみられます。
C型肝炎は、他の肝炎と異なり、感染した人の6〜7割が慢性肝炎となるといわれています。
キャリア化したうちの3割〜4割がGOT、GPTなどの異常値をとり、場合によっては肝硬変、肝細胞がんという状態をひきおこすこともあります。
診断は、血液検査でHCV抗体を測定しますが、HCV抗体が陽性であっても、HCV-RNAが陽性でなければ治療の必要性は特にありません。(HCV-RNAは現在HCVが存在するかどうかの確認の検査です。)
ただし、感染のごく初期にはHCV抗体が陰性でHCV-RNAのみが陽性にでることがあります。)
治療法はやはり、他の急性肝炎とあまりかわりませんが、慢性化の可能性が高い場合にはインターフェロンとリバビリンの治療の適応となります。