更年期のホルモン補充療法(hormone replacement therapy:HRT)
上半身、特に顔のほてり、のぼせ、冷え、発汗などをhot flushといいますが、これらの症状に一番短時間で効果的な治療方法がホルモン補充療法です。
もちろん他の、不眠やいらいら、気鬱、肩こり、めまい、皮膚粘膜の萎縮などにもある程度以上の効果は認められる場合が多いのですがもっとも「効いた」と感じられる症状が上記の症状です。
HRTの利点
足らなくなった女性ホルモンを補充してやるという意味でさまざまな利点があります。
特に、hot flushには非常に効果的です。
また、痛みによる性交障害や、粘膜萎縮による尿路障害、抑うつ状態の改善、骨粗しょう症の予防、大腸がんのリスク減少などにも効果があるとされています。
物忘れや計算能力なども更年期の早い状態で投与すると改善すると報告されています。。
投与方法
HRTのリスク
乳がんの可能性がやや上昇します。
また、心臓血管系や脳卒中などの率はやや上昇するといわれています。
65歳以上でHRTを開始するとかえって認知症などの可能性があがることもあるという報告もあります。
経口投与 | プレマリン(卵胞ホルモン)、プロベラ(黄体ホルモン)などを内服する方法。 年齢や条件などにもよりますが、子宮がある場合は基本的に両方のホルモン剤を投与します。 |
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経皮投与 | E2貼布剤(エストラダーム、フェミエストなど) ホルモン剤の肝臓の代謝に関与しないので消化器症状や胆石のリスクが減る代わりに、皮膚のアレルギーなどがでることがあります。 |
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膣内投与 | 基本的に年配の女性の萎縮性膣炎や外陰炎などに投与します。局所的に効果を求めるときに使います。 | |
投与の注意点
女性ホルモン剤は些少なりとも血栓症の可能性が上昇しますので、もともと血栓症などの既往のある方や、血縁の方がいらっしゃる場合は投与を控えるほうがよいでしょう。またヘビースモーカーも同様の理由で控えられらほうがベターです。
また、女性ホルモンに反応する種類の悪性腫瘍(乳がん、子宮ガンなど)なども同様です。
また、更年期症状と思い込んでいて、実は他の病気が原因であった、ということもあります。
甲状腺の病気や、精神疾患などでも同じような症状がでることがあるためです。
そのため、HRTである程度時間がたっても(早い人ですと、2週間で効果が十分あらわれます)予想したような効果が現れない場合は他の病気を疑い、また必要に応じて他科の医療機関にご紹介させていただきます。
当クリニックでは半年から1年に1回、子宮や卵巣の超音波診断や子宮ガン、乳がんのチェック、血液検査などでホルモン状態も測定しつつ、HRTを施行しています。