高血圧症
日本では、現在高血圧症のひとは3000万人以上いるといわれています。
では、なぜ血圧が高いといけないのでしょうか?
生きていくためには、体中の細胞に常に酸素が与えられないといけません。そのため心臓は、全身にむけてたくさん酸素を含んだ血液を送り出すのですが、このとき、細い血管の中をも血液が通るためにはかなりの圧力が動脈の壁にかかります。この圧力を血圧というのです。この血圧がある一定のレベル以上になると高血圧といいます。
高血圧の状態が長く続くと、圧力の影響で動脈の内側の膜が分厚くなり、動脈硬化を促進します。血管は全身の臓器に流れているので、どの臓器もやられてしまう可能性があるのです。
常に心臓に負担が余分にかかるうえ、心臓の周囲の冠動脈なども狭くなるため狭心症や心筋梗塞など、また脳出血や脳梗塞、腎不全などがおこることもあります。
腎臓に働きかけて
レニンを作らせます
血圧が上がる仕組みと薬の効果の場所
黒い枠の中のいろいろな物質が働きかけて血圧が上昇します。
オレンジの枠の薬たちがこのようにそれぞれ働きかけることによって血圧を下げるのです。
薬の種類 | よく使われる薬の名前 | 積極的に使いたい病気 | 禁忌事項 |
CA拮抗薬(Caの流入を阻害して血管平滑筋を弛緩させる。) 冠動脈を含む血管拡張作用、心収縮力抑制、刺激伝道系抑制 糖、脂質、電解質代謝に悪影響なし、1日1回投与可能で、多くの症例で第1選択薬となることが多い |
ジヒドロピリジン系(ノルバスク、ペルジピン、アダラートなど) ベンゾジアゼピン系(ヘルベッサーなど) |
脳血管疾患後、狭心症、左室肥大、糖尿病、高齢者 | ジルチアゼム(洞性徐脈、房室ブロックなどのため)、心不全 |
アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤(レニン・アンギオテンシン系の抑制、降圧系のカリクレイン、キニン、プロスタグランジン系の増強作用) 降圧と独立して臓器障害の予防などが可能 糖尿病・心不全・脳循環不全などの合併症があるときの第1選択薬 |
カプトプリル、レニベース、アデカットなど | 脳血管疾患後、心不全、心筋梗塞後、左室肥大、糖尿病、腎障害、高齢者(咳を誘発することにより誤嚥性肺炎を予防) | 妊娠、授乳中 高K血症、両側腎動脈狭窄 |
アンジオテンシンU受容体拮抗薬(ARB)(A−U受容体に結合して、A−Uの作用(血管収縮、体液貯留、交感神経亢進作用)を抑制 キマーゼ系も阻害 ACE阻害薬よりセキ、発疹などの副作用が少ない |
ニューロタン、ブロプレス | 脳血管疾患後、心不全、心筋梗塞後、左室肥大、糖尿病、腎障害、高齢者 | 妊娠、高K血症、両側腎動脈狭窄、、重症肝障害 |
利尿薬(腎尿細管でのNa,水の再吸収を抑制して、循環血液量を減少させる) | サイアザイド系(低K血症にはK製剤、通風にはアロプリノール併用)クレアチニン2mg/dl以上には無効 フルイトラン、ベハイド |
脳血管疾患後、心不全、腎不全(ループ利尿薬)、高齢者 | 痛風 |
ループ利尿薬(腎機能障害にも投与可) フロセミド(ラシックス) |
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K保持性利尿薬 スピノロラクトン(Na再吸収・K排泄抑制効果) トリアムテレン(高尿酸血症にも使用可能) |
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β遮断薬(心拍出量低下、レニン産生の抑制、中枢での交感神経抑制) | β1選択性ISA(−)テノーミン、メインテート、セロケン β1選択性ISA(+)アセタノール、セクレトール β1非選択性ISA(−)セレカル、インデラル β1非選択性ISA(+)ミケラン、カルビスケン |
若中年者、狭心症、心筋梗塞後、頻脈、心不全 | 喘息、徐脈、房室ブロック、レイノー症状 攣縮性狭心症にはCa拮抗薬併用 |
α遮断薬(交感神経末端の平滑筋のα受容体を遮断、頻脈が少ない) 脂質代謝によい影響を与える |
バソメット、カルデナリン | 高脂血症、前立腺肥大 | 起立性低血圧、バルデナフィル投薬中 |
レニン
心臓の血液を送り出す
量を増やして血圧上昇
高血圧の運動療法について
もちろん、重症の高血圧でコントロールされていないひとは別ですが、ある一定の運動によって、血圧を改善する効果があるといわれています。
有酸素トレーニングは、高血圧だけでなく、肥満、高脂血症、糖尿病のひとなどにも有効とされています。
軽く汗をかく程度のウォーキングなどを1回30分/日など、もしくは隔日1回1時間/などで有効といわれています。(目安は脈拍数110〜120/分くらいです)
また、運動したあと急に運動をやめると、場合によっては急激に血圧や脈拍が低下して失神したりすることもありますので、運動をやめるときはゆっくり徐々にやめるのがよいのです。
また、入浴なども、ぬるめの温度で比較的短時間のほうがよいでしょう。温度差があると、急に血圧が変動しますので、浴室と脱衣所の温度を近くしておきましょう。
1,2分安静にしてから測定
トイレにいって
また、早朝高血圧という状態があります。いちがいにはいえませんが、朝、起床後1時間以内、排尿後、座位、1、2分の安静後、降圧剤服用前、朝食前に測定して、140mmHg/90mmHg以上なら一般的には高血圧でしょう。
早朝には、覚醒・起床により交感神経や血圧を上昇させるホルモンなどが急速に働き出し、このような状態になるのだろうといわれています。(一般的に朝の血圧は夜よりも高いことが多いのはそのためです。)
これらもまた、程度によっては投薬あるいは投薬内容の変更、といった方法があります。
心臓が一番収縮したときの
血管にかかる圧が
収縮期血圧
一番拡張したときの圧が
拡張期血圧です。
収縮期の血圧(mmHg)
高血圧症は、何かの原因が明らかにあっておこる二次性高血圧症と、はっきりした原因がわからない本態性高血圧症というものがあります。高血圧症の90%は本態性高血圧症といわれています。
二次性高血圧症をおこす疾患で多いものは、腎臓の病気、たとえば腎炎、腎盂腎炎、妊娠腎、腎のう胞や、原発性アルドステロン症、クッシング症候群、褐色細胞腫などといった内分泌系の病気などです。ただし、これらは一般的にはそれほど頻度は多くありません。
本態性高血圧症は、もともとの遺伝的な素因に加えて、肥満やアルコール過剰摂取、カルシウムやカリウムの摂取不足、タバコ、食塩の過剰摂取、ストレス、運動不足などの生活習慣がからまりあって発症するといわれています。
治療方針としては、(二次性高血圧症である場合はそのもともとの疾患の治療が必要です)高血圧の程度によって変化しますが、まず生活習慣の改善が一番必要となります。
まず
食塩の制限(1日6g以下)
適正な体重の維持(BMI18.5〜24.9)
アルコールの制限(1日に男性20〜30g(日本酒1合、ビール大瓶1本)、女性10〜20g以下 )
コレステロールなどの多い食品を控える、新鮮な野菜や果物、牛乳などをとる
運動(早足のウォーキングなどを1日30分または隔日に1時間など)
禁煙
ストレス、睡眠不足を避ける
これらを数ヶ月続けてみても改善が見られない場合や程度が強い場合は薬剤療法となります。
たとえば、これらの生活習慣の改善によって収縮期血圧(上の血圧)はこのように変化するといわれています。
体重10kgの減量→5〜20mmHg低下
食塩制限→2〜8mmHg低下
飲酒制限→2〜4mmHg低下
運動→4〜9mmHg低下
血圧が高い状態が続いて
血管に負担がかかると
@血管を収縮さぜる
A尿の排泄を減少
の二つの作用で血圧を
上昇させます
アンギオテンシン
U
アンギオテンシン
T
現代は、昔と違って非常にすぐれた、家庭でも使いやすい血圧測定器がたくさんあります。
もちろん、タイプによって差がありますので、ご心配であれば医療機関に持参され、聴診器で測定したものと誤差があるかを確認されることもよい方法です。
家庭で血圧を測定するには、
朝、起床後1時間以内、排尿後、座位、1、2分の安静後、降圧剤服用前、朝食前に
夜または就寝前、座位1,2分の安静後
がよいとされています。
薬剤による治療法
基本としてまず1種類の投薬から開始しますが、効果をみながら2種類以上のお薬を併用することも多いです。
できれば1日に何回も飲まないでよいように1回でゆっくり作用してくれるお薬が選ばれることが多いです。また、飲んですぐにでなく、2,3ヶ月くらいで目標の値をめざします大切なことは、血圧がさがったからといって急に薬をやめたりしないことです。。
全身の臓器が傷んでしまいます。
ACEとは
アンギオテンシン変換酵素といい
肺の血管内皮細胞からつくられます。
レニンという腎臓で作られた
物質がここに作用して
カリウムがたくさん含まれている食べ物
アンギオ
テンシノーゲン
ノルアドレナリンを出して血管の抵抗を高めて血圧上昇
肥満細胞から作られる
高血圧の人の目標値 | ||
高齢者 | 140/90mmHg未満 | |
若年・中年者 | 130/85mmHg未満 | |
糖尿病、腎機能障害のひと | 130/80mmHg未満 |
ちなみに、腎臓病などでカリウムを制限している人たち以外であれば、食品から適正な量のカリウムを摂取することは、高血圧に効果があるといわれています。(カリウムは体からナトリウムの排泄を促します) カリウム摂取1g/DAY→収縮期血圧2mmHg低下といわれています。
カリウムは野菜などにたくさん含まれていますが、水溶性ですので、あまり長時間火の通ってないものからたくさんとりましょう。
バナナ、トマト、イチゴ、スイカなどの果物や、生のキャベツなど。また、ゆでたほうれん草や枝豆、ブロッコリ、かぼちゃなどもよいでしょう。
拡張期の血圧(mmHg)
赤のラインを越すと高血圧となります。赤が濃いほど重症となります。
白衣高血圧
「うちで血圧を測るとこんなに高くないのに」という言葉をよくきくことがあります。
普段は正常である血圧が、医療環境下で高血圧になってしまう状態のことをいいます。
最近の報告では、白衣高血圧のひとが、数年のちに持続的な高血圧に移行する確立が高いことがいわれており、すぐに薬剤治療などの必要性はないものの、生活習慣を整え、経過観察されることをお勧めします。
逆白衣高血圧(仮面高血圧)医療機関での血圧は正常で、それ以外では高血圧の状態というものあります。
心臓は懸命に血液を全身に送り出しています
ACE
肝臓で作られて
血液中に入ります。
起床して
収縮期血圧(mmHg) | 拡張期血圧(mmHg) | 日本での高血圧ガイドライン(高血圧学会) | |
<120 | かつ | <80 | 至適血圧 |
<130 130〜139 |
かつ または |
<85 85〜89 |
正常血圧 正常高値血圧 |
140〜149 | または | 90〜99 | 高血圧軽症 |
160〜179 180以上 |
または または |
100〜109 110以上 |
高血圧中程度 高血圧重症 |